楽天が携帯キャリア事業に参入すると発表しました。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのように自前の「基地局」や「加入者管理機能(HLR/HSS)」を持つフルキャリア(MNO)になります。
楽天がMVNO事業者→MNO事業者に!
楽天が自前の基地局やネットワークを構築する携帯キャリア事業(MNO)に参入すると発表しました。サービス提供は2019年を予定しています。これまでも楽天はNTTドコモの回線を借りてMVNO事業をしていました。先日、プラスワン・マーケティングのMVNO事業を買収したばかりです。
そもそも「MVNO」と「MNO」は何でしょうか。
「MVNO」は設備を持たずに他社から設備を借りて事業を行う形態を指します。他の会社が構築した「基地局」「ネットワーク」「加入者管理(HLR/HSS)」を借りて事業をしています。楽天以外にも、LINEモバイル、mineo、BIGLOBEなどが該当します。
「MNO」は設備を自ら構築し、全て自社でサービスを行うものです。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが該当します。
投資額は最大6,000億円を予定
自前で基地局などの設備を構築するためには膨大な費用が発生します。楽天はサービス提供開始時点で2,000億円の設備投資を実行し、2025年までに最大6,000億円程度の設備投資を計画しています。上記金額は非常に低い数値となっています。参考までに国内3キャリアの1年間の設備投資を下記に記載してみました。
【1年間の設備投資額】
・NTTドコモ:約6,000億円
・KDDI:約5,300億円
・ソフトバンク:約4,000億円
楽天の6,000億円という数値がいかに少ないかがご理解いただけたと思います。日本全国のエリアカバー率を99%に持っていくためには、少なくとも1兆円規模の金額が必要となります。
新たな周波数1.7GHz/3.4GHzは遠くまで飛ばない
最も気になるのは、楽天が申請した周波数帯。楽天が申請した1.7GHzと3.4GHz帯は高速で通信可能なものの、電波飛距離が非常に悪い周波数。
周波数は数値が高くなると通信速度が速くなるものの、飛距離が短くなります。その一方で周波数の数値が低くなると通信速度が遅くなるものの、飛距離が伸びます。つまり、周波数の数値は、「飛距離」と「速度」がトレードオフの関係となっています。
今では、プラチナバンド(900MHz)を手に入れ、電波が劇的に改善されつつあるソフトバンクですが、ひと昔前はプラチナバンドが無かったため電波が非常に悪く、携帯電話がつながらない「圏外エリア」がありました。
楽天は都市部のみ基地局を建て、田舎などの過疎エリアは引き続き、MVNO事業者としてNTTドコモ回線を利用することで、低価格で高品質な通信を提供するものとみられます。
楽天の狙いは顧客基盤の拡大と囲い込み
それでは、なぜ楽天は携帯キャリア事業に参入するのでしょうか。理由は非常に簡単で「顧客基盤」の拡大と囲い込みを行いたいからです。
楽天の顧客は国内に1億人いると言われています。国内最大手のNTTドコモの携帯件数が約7,500万人と言われています。数値を単純比較しただけでも、楽天の方が顧客人数が多いことが分かります。
通販サイト「楽天市場」、ポイントサービス「楽天ポイント」、決済システム「楽天pay」を一気通貫で提供するエコシステムを構築するには「携帯キャリア事業」が必要だったと言えます。なお、NTTドコモやKDDIも「+d」や「ライフデザイン企業」として決済システムの強化を行っています。
少なくとも「楽天」の参入により大幅な料金引き下げは考えにくいと考えられます。また、楽天の申請が認可される可能性も未知数です。